検査後、ベッドに横たわっているときにまるで何かが息子を入れ替わり立ち替わり乗っ取っている状態になったのです。
横たわったまま、目はうつろで、ほとんど目を瞑った状態のまま小学高学年の息子が、突然幼児向けアニメのキャラクターのセリフを呟いたかと思えば、「お前の喉を掻っ切ってやろうか」と低い声で言います。
また踊ったことのないバレエ舞踊曲を口ずさみながら、ベッドの上で足だけ動かして踊っている様子はカオスでしかありません。
そんな状態が続く中、何度も息子の名前を呼んで、こちらに意識を取り戻そうとしていると、ふっと我に戻る瞬間もあって「あれ、ここどこ?」と聞く息子。
「病院だよ、しっかりして。戻ってきて」と私。
その時、突然息子が目を瞑ったまま、教えてもらって暗記していた般若心経を自ら唱え始めたのです。
小さい声ですが、最初から最後までちゃんと唱えていました。
私はびっくりしながらも、あ、これで息子は今の状態から抜け出せるかもしれないと思いました。
ひと通り唱え終わった後、息子が目を開いて、手を胸に当てて言いました。
「ここに光が灯った、、」
それと同時にスーッとおかしな状態はおさまったのです。
本能的に息子が自ら唱えたことで、“お経が息子を守ってくれた“と感じた瞬間です。
お経や真言は、光の世界に通じる道具であり手段だとその力のある方が言われていましたが、その通りかもしれないと思いました。
唱える人の心持ち次第で、光にも闇にも通じるそうです。
お経や真言の意味を理解して、何度も何度も唱えることで言葉に力が宿るから毎日の修行と思って頑張ってください、と言われ毎日私と夫と息子で唱えていましたが、その意味が本当に理解できるまでにかなり時間がかかりました。
それは一長一短に身につくものではなく、ひたすら地道に続けていく中で、息子の体調も良くなったりまたひどく悪くなったりが続いたため、信じたくてもどうしても疑心暗鬼になってしまったりの葛藤にも苦しみました。
本当に唱えていることで力がついているのか。
あとどのくらいで息子の体調は落ち着くのか。
この先もこれが続くとキリがないんじゃないか。
しかし、5日間に及ぶ検査入院で、最終的には遺伝子検査までしても息子の身体や脳に異常は見つからなかったことで、その後私たちができることはひたすら毎日唱えて力をつけることしかなかったのです。